雑食オタクの雑記帳

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【星屑テレパス】雷門瞬に関する小考察~彼女の歪みと違和感~【感想】

※星屑テレパス最新話までのネタバレを含んでいます。

 

先日、きらら無印の最新号が発売されました。現状、『星屑テレパス』と『むすんで、つないで。』の最新話を読むためだけにMAXのついでにFUZの定期購読で読んでいるのですが、星テレは相変わらずシリアスな展開が続いてますよね。

今月は前回に引き続き、遥乃のメイン回でした。回想で彼女の原点を示した上で、敗北で塞ぎ込んだ瞬と対話を試みるわけですが……めちゃくちゃ熱かった。優等生で大人っぽい遥乃が剥き出しの感情を瞬にぶつける様には成長を感じました。遥乃と瞬の好き嫌いの話を「負けっぱなしの瞬ちゃんは大嫌い」という台詞で活かすのも粋でしたね。惜しむらくは瞬の掘り下げが来月以降に持ち越しになってしまったことで、ぶっちゃけ一ヶ月生きるの面倒くさいなという気持ちです。

 

さて、ここまでは前書きです。今回の話題は星テレ最新話の感想ではありません。雷門瞬に関するちょっとした考察についてです。私は瞬が推しで星テレの読書意欲の七割くらいを彼女が担っているほど好きなキャラなので、星テレを読む際に瞬を中心にしがちなのですが、2巻と単行本未収録範囲を読んでいて気になったことがありました。

それは「雷門瞬はなぜロケット研究同好会にいるのか」ということです。

その問いに答えるのであれば、不登校で孤独を貫いていた瞬が、『ロケット勝負』と『海果が瞬自身に純粋な興味を持っていたこと』に少し心を動かされた」というのが一つの回答になるのではないかと思います。

しかし、「そもそも瞬が海果たちと同じ高校に進学しているのがおかしい」という仮説が頭をよぎりました。私がなぜそのように思ったのかと、その仮説が成立するなら瞬にどのような影響を与えているのか、ということについて書いていきたいと思います。

 

 

仮説の根拠1 「興味がないことはしない主義」との矛盾

この仮説の根幹にあるのは、瞬の信念と現状に対する違和感です。瞬を象徴するのは、見出しにある通り「興味がないことはしない主義」という考え方だと思います。瞬を仲間に引き入れるためのヒントでもあったこの考え方ですが、そうなると瞬の現状って少し変なんですよね。

中学生の時点で瞬は「大型ロボットを作る」という目標を掲げて勉強しており、興味に対して真摯でストイックな子です。父が職人か技術関係の仕事をしているのもあって相応の知識は持ち合わせていると思われます。この歳にして専門性のある瞬ですが、こういう子が果たして普通の高校を選ぶのでしょうか。順当に考えれば、自分の興味にあった学校を志望校にするのではないでしょうか。ましてや興味のあることには一切妥協しない瞬が進路をテキトーに決めたとは私には思えませんでした。

まず、これが一つ目の根拠で考察の土台となる部分です。

 

仮説の根拠2 「竜岡科学技術高校」という存在

根拠1では進路の話をしましたが、これを補強する根拠2が「竜岡科学技術高校」という学校の存在です。前年のモデルロケット選手権で優勝するという華々しい経歴を持つ学校で、宇宙研究開発部という如何にも本格的な名前の団体が参加しています。この部の代表者である秋月彗は、最大のライバルであり海果たちの成長にも関わってくるキーパーソンですが、瞬は彼女に対抗心を見せていました。

そんなすごい学校があるわけなんですけど、

この学校っておあつらえ向きだと思いません? 

この「竜岡科学技術高校」瞬の志望校としておあつらえ向きの学校だと思うんですよ。瞬の夢が大型ロボットを作ることだとすれば、ここに進学するのが一番の近道でしょう。普通の高校に進学する理由なんてありません。不登校になるならなおさらです。ちなみに2巻のカバー裏漫画によれば瞬は理系科目の成績が良かったらしく、ここが難関校だとしても受かる可能性は十分あったでしょう。

しかし、この仮説が成立してしまうと、瞬は竜岡科学技術高校を落ちて藤野岬高校に進学したことになります。完全に予想になりますが、前者が国立で後者が公立なら受験を両立できるはずなので、これはある線だと思います。

この二つの根拠を以て「瞬がロケット研究同好会にいるのは、志望校に落ちたため」という答えを導き出しました。この文脈から瞬の人物描写を見ると、どこか不明瞭だった言動が少しクリアになるのです。

 

仮説から導かれること~瞬の自己評価の歪み~

前述の通り、「瞬は志望校に落ちて海果たちと同じ高校に来た」という予想を立てた訳なのですが、こう考えると2巻から最新話に掛けての瞬の言動に関わる謎が解けると思っています。

2巻、具体的には大会に向けてモデルロケットを作り始めてから、瞬の言動に不穏な影が見られるようになります。それは「勝てなかったら意味がない」「勝つことが私のここにいる意味」といったニュアンスのものです。ただ勝利に貪欲なだけではないかという見方もなくはないのでしょうが、私はこの考え方に瞬の歪みを感じます。先に記したことは、「能力が私の存在意義」という風にも言い換えられると思います。実はこの考え方が垣間見えるところが1巻にもあり、ズバリそれはロケット勝負に負けた海果の話を聞くシーンです。瞬は「一人の人間」としてではなく「自分の能力」を買われてスカウトされたと考えていたでしょう。結果、海果はロケット作り以上に瞬自身に興味を持っていたため、瞬もロケット作りに協力する気になったわけですが。

しかし、そういう経験をしてもなお、瞬の負の一面は解消されることはありませんでした。そして、大会本番では彗たちとの圧倒的な差を見せつけられ、自分たちは打ち上げに失敗して予選敗退。瞬は再び心を閉ざしてしまいました。

実は予選敗退の時点では、単に「自信をへし折られて塞ぎ込んだ」と思っていたのですが、今月号の引きとなる瞬の台詞で見方がガッツリ変わりました。

……わかってない…わかってないんだよ…本当に…

私はお前らが思うほど何かができる人間じゃないんだ…

本当は…何も…(雷門瞬)

出典:星屑テレパスまんがタイムきらら2021年11月号

この台詞、予選敗退で自信を喪失したから出てきた台詞ではないと思うんです。「本当は」という表現を汲むなら、もっと前、海果たちが瞬のところに来る前からあった根深い心の問題だったのではないでしょうか。大会で上手くいかなかったとはいえ、瞬も一定以上の技術は持っていたはずです。モデルロケット3級ライセンスを持っていたのが一つの証左です。そんな人間が心の奥に無能感や劣等感という類いの感情を隠していたのはなぜでしょうか。

それはおそらく既に挫折を経験していたからです。では、どこで挫折を経験していたか。それが竜岡科学技術高校*1に落ちた、または諦めたときだと私は考えています。ここで小さな考察がすべて繋がるのです。

 

余談ですが、この考察を行っているときにもう一点気になったことがありました。それは「瞬がモデルロケット3級ライセンスを持っていた理由」です。瞬の夢は大型ロボットの製作だと作中で語られていますが、ロボット製作を専門にしていてもモデルロケットのライセンスを持っているものなのでしょうか。4級であれば簡単に習得できるのかもしれませんが、3級と指導講師のライセンスまで短期間で取ることができるかと言われると、私は少し怪しいと思いました。ロケット勝負を持ちかけられる以前からライセンスを持っていたと考えるのが自然ですが、なぜ自分の専門と違う分野のライセンスを持っていたのか不思議です。単にロボット以外にもさまざまな分野に手を出していたからと言われれば終わりですが、モデルロケットも瞬の過去と何かしら関連性があると私は踏んでいます。

 

まとめ ~雷門瞬に課せられた試練~

ここまでいろいろ書いてきました。過去の挫折で抱え込んだコンプレックスと向き合って解消することが、雷門瞬の試練になると思います。1巻のときのように海果が最終的に瞬の救いになるのではないかと予想しています。また、海果と瞬は表面上は正反対に見えても根っこは「一途に夢を追いかける者」「興味に対する純粋さ」など似たところの多い関係ですが、海果が「弱そうに見えて意外と強い(不屈の精神)」のに対し、瞬が「強そうに見えて実は弱い部分を抱えていた」と対照的なのが興味深かったですね。

ただ、自分で書いておいてなんですが、

ここまですべて私の妄想です。

作品内に散りばめられた要素を上手いこと繋ぎ合わせて説を構築したつもりですが、私の考察が大外れする可能性は十分高いです。しかし、こういった遊びは本編で真実が明かされる前の特権だと思うので、書いていて楽しかっただけで良しとします。もちろん、この考察が少しでも当たったら嬉しいです。

それにしても一ヶ月がすごく長い道のりに感じられます。早く続きが見たいです。ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。

*1:あるいはそれに類する志望校